静岡県掛川市つま恋の野外会場で、1975年8月2〜3日、「吉田拓郎・かぐや姫 コンサートインつま恋 1975」が開催された。夕刻から翌朝にかけてぶっ通しの12時間、5万人の若者が熱狂した「伝説のオールナイトコンサート」として知られる。
それから31年後の2006年9月、再び拓郎、かぐや姫他大御所のフォークシンガーが会して「伝説」が再現され、団塊世代を中心として3万8千人の男女がつま恋に集い、青春時代にタイムスリップした。
往年のグループサウンズやフォークソングを特集したTV番組が、最近もしばしばオンエアーされている。すっかり老け顔になったシンガーが、ステージから歌詞を曲に先行して聴衆に伝えながら、一体となって合唱している場面は、いささか気恥ずかしいが、当時のコンサート会場でよく見られた光景である。会場の雰囲気は、興奮や熱狂というより懐かしさに浸りきった、穏やかなものに様変わりしているが。
往時の名曲を耳にしているだけではなく、中高年の間では、自ら楽器を手にしたり、再びバンドを組んだりする人が増えているという。ヤマハでは、「大人の音楽レッスン」を各地で開催し、さらに対象を絞った「50歳からの音楽教室」も行われている。
このヤマハが、かつて1969年から86年まで「ポプコン」というイベントを主催していた。日本全国のアマチュア音楽家による作曲コンクールで、次第に規模が大きくなり、8ブロックの地区予選を行い、勝ち抜いた者がつま恋に集合して本選を開催、「アマチュア音楽家の甲子園」と呼ばれた。
小坂明子のベストヒット、「あなた」は、ポプコンのグランプリ作品として有名だが、他にもキラ星の如く名曲が生まれ、数多くのプロミュージシャンが誕生した。この頃、日本の音楽シーンがフォークからニューミュージックへ移り、メッセージ性が薄れ、抒情性、情緒性の強い詩と曲調が主流になったと位置づけられる。
このポプコンと連動する形でラジオで流れていたのが「コッキーポップ」。ニッポン放送の深夜0時半過ぎ、大石吾朗の
「 黙っていれば友達になれない 叫ばなければ 消え去ってしまう 私たちが生まれてきた時から育ててきた 何かを伝え合うために ちぎれかけた世界の 心と心を繋ぎ合うために 私たちの歌が 今ここにある 」
というナレーションとともに、中島みゆきの「時代」がバックミュージックとして流れてきて(バックミュージックは定期的に変更された)番組が始まる。静かで控えめなナレーションと、ポプコンから生まれた数多くの個性的な楽曲によって、深夜のポエティックな世界に誘われていった。