小説家の自由と嘘
何を書いてもいい
「CWS創作学校」は、作家を養成するライティングスクールだが、このCWSが先日2日間にわたる「公開サマーセミナー」を開催した。
初日のプログラムは「絵本講座−ストリーテラー入門」、2日目は「作家になる!?」というテーマで、それぞれ第一線の作家・評論家によるレクチャーが行われ、最後は作家金井美恵子氏による『小説家の自由と嘘』という講演。金井美恵子ファンの知人に誘われて、この講演だけ聴きに行った。
金井氏は、
軽妙かつ痛烈な批評精神をもった小説・エッセイの書き手として人気だが、自分でも言っているように、
人前で話すのはつとに苦手な様子。作品の筆致とは裏腹に、訥々とした語り口で、まずは40年前、自分が小説家デビューを果たすこととなった経緯をとりとめなく話し始めた。
半ば過ぎから、話は核心へ。『楢山節考 』『笛吹川 』で知られる深沢七郎の『風流夢譚』が巻き起こした事件へと話が及んだ。
『風流夢譚』が巻き起こした事件とは、『嶋中事件』と呼ばれるもので、小説『風流夢譚』の中の皇室に関わる描写が不敬にあたるとして、右翼少年が出版元である中央公論社社長(嶋中鵬二)宅へ押しかけ、暴力行為に及んだ事件である。夫人が重傷を負い、家政婦が刺殺されるという悲劇を生じるが、その後中央公論社は、謝罪や社内的処分を余儀なくされる。世間からの批判や脅迫にさらされた深沢は、放浪の旅に。失意の中で、深沢は敬愛する正宗白鳥に「自分の書いたことは間違っていたのか?」と問いかける。それに対して白鳥は「小説というのは何を書いてもいいのだ」とこともなげに答えたという。
金井氏は、世の小説家の中には野心むき出しで大作を書こうとする人もいれば、自分のように「人より若干才能があることを誇示したい」という「みみっちい野心」で書く者もいる。ともかく、この正宗白鳥の「小説というのは何を書いてもいいのだ」ということばを、書くうえでの励みとしてほしいと締めくくった。
シンプルといえばきわめてシンプルなメッセージに聞こえたが、小説家を志す人にとっては、あらためて目を見開かされることばだったのかもしれない。
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エマ・ボヴァリーは死んだけど、中野桜子は生きている!/