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裁判員制度

アメリカの陪審制度との違い

法廷でひとりの少年が父親殺しの罪により裁かれようとしている。尋問がひととおり終了し、評決を下すべく別室に席を移した12人の陪審員達。状況から有罪は明らかだとして、皆さっさと評議を終わらせたがっている。その中で、8号陪審員ただひとりがそれまでの審理の内容に疑問を投げかけ、無罪を主張。あらためて事件をたどっていった末に、12人が出した結論は無罪評決だった。

これは、1957年にヘンリー・フォンダ主演で製作された映画『十二人の怒れる男』のストーリー。推理ドラマ、ミステリーの面白さを描出しながら、12人のパーソナリティをあらわにしていく人間ドラマとして傑作の評価が高い。そしてアメリカの陪審制度を理解する格好の教材として、大学の法学部の授業などで取り上げられることも多いようだ。

アメリカの刑事裁判において、一般市民が審決に参加する陪審制度の様子は、『アリーmy Love 』やその他の法廷ドラマでもおなじみだ。また世間を大きく騒がせたO・J・シンプソンマイケル・ジャクソンの裁判でも、陪審員の判断の行方が注目の的となった。

日本でも2009年から裁判員制度が導入される。国民が刑事事件の判決に関与するという点で、映画やテレビで見るアメリカの陪審制度の光景をイメージしがちだが、裁判員制度は「参審制度」の一形態として、「陪審制度」とは区別される。

陪審制度では、評議の基礎となる証拠の採否についてはプロである裁判官が行うものの、その証拠に基づく被告が有罪か無罪かの決定は、普通の市民である陪審員だけで行う。一方、参審(裁判員)制度では、市民と裁判官が対等な立場で協力して判決を導き出す。

マスコミ等が実施する世論調査によれば、実施を2年後に控えながらも、裁判員制度について国民の大半が「人を裁くことに自信がない、責任が持てない」などとして、及び腰である。最高裁では、より制度のPRに努め、国民の理解を得る必要があるとしている。

なぜ裁判員制度か

裁判員制度は、そもそもなぜ導入されることとなったのか。

その背景には、エリート階層に属する職業裁判官のみによって下される判断が、しばしば国民の常識的な感覚と乖離しているという日本の裁判に対する根強い批判がある。先進諸国の大半では、陪審制や参審制を導入し、一般人を司法の場に積極的に関与させることで、市民感覚を取り入れた刑事裁判を実現しているのだという。

そこで司法制度改革審議会が、2001年6月に国民の司法参加を訴えて裁判員制度の導入を提言した。

この裁判員制度を解説した本として現在最も売れているのが、高山俊吉著『裁判員制度はいらない』だが、その内容は、最初から最後まで制度の施行に真っ向から反対するものだ。

日弁連の裁判員制度啓発サイト導入の過程があまりに拙速であったとし、死刑まで言い渡すことのある手続きに市民を参加させるというのは、途方もなく重い責任を市民に負わせることだと批判する。また裁判員となる市民の負担軽減に過度に配慮するあまり、拙速かつ適正を欠いた裁判につながりかねない、うむをもいわせない裁判員の義務化は、徴兵制をも想起させ、憲法違反の疑いさえあると主張する。著名人の制度反対のメッセージも連ねて、制度批判のオンパレードとなっている。

また関西学院大学ロースクール教授丸田隆氏は自著『裁判員制度』の中で制度導入を一定程度評価しつつも、より国民の、国民による裁判を実現する陪審制度の実施を主唱している。しかし上記高山氏は、丸田教授がこの本の中で、「主権者たる国民も何か『公的』なことを(しよう)」と呼びかけているのを、日々の生活に手一杯の庶民の実情に無頓着すぎると痛烈に批判している。

国民の司法参加を通じて民主的な裁判を実現するという理想の一方で、「人を裁きたくない、専門家に任せるべき」という日本人ならではの感情が現実にはある。

劇的な結末を堪能できる『十二人の怒れる男』だが、もしスクリーンの中の登場人物(8号陪審員以外の陪審員)に自分が成り変わったと想像してみたら、評議を終えたエンディングでは「危うく無実の人間を死刑台に送り込むところだった」と、背筋が凍るような思いにとらわれていたに違いない。

裁判員制度はいらない

裁判員制度はいらない ■著者: 高山俊吉 ■出版社: 講談社 ■サイズ: 単行本 ■ページ数: 203p ■発行年月: 2006年09月 ▼内容(「BOOK」データベースより): 憲法違反の裁判員制度は、「軍国主義への一里塚」だ。「裁判員制度反対」の特別寄稿も収録。 ▼アマゾンレビューおすすめ度の平均: 4.0/4 裁かれるよりも裁くほうが拷問/4 制度の欠点は批判できているが、感情的で、不足しているところもある

十二人の怒れる男

十二人の怒れる男 ■監督:シドニー・ルメット ■製作:ヘンリー・フォンダ/レジナルド・ローズ ■脚本:レジナルド・ローズ▼17歳の少年が起こした殺人事件に関する陪審員の審議が始まった。誰が見ても彼の有罪は決定的であったが、一人の陪審員は無罪を主張。そして物語は思わぬ展開に! ▼アマゾンレビューおすすめ度の平均: 5.0/5 実にスリリングな推理劇です/5 アメリカの良心/善良な市民の善意が描かれる。法廷劇=ディスカッションドラマであり、人間ドラマであるだけでなく、立派な推理ミステリーにもなっているのが素晴らしい。/5 現代社会の縮図を垣間見た!!