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イスラエルとパレスチナ

ユダヤ人の数奇な運命

イスラエルとユダヤ人の歴史を概観した時、その壮大かつ過酷で数奇な運命に圧倒される。

ユダヤの歴史をたどるには、旧約聖書に記された伝承や神話をひもとくことから始まるが、『創世記』によると始祖アブラハムは、「パレスチナは神がイスラエルの民に与えた土地である」との啓示をヤーヴェ(エホバ)神より受け、75歳の時一族を引き連れ、長い流浪の末に紀元前1500年頃、「約束の地」カナン(パレスチナ)へ到着する。その後、アブラハムの子孫は故郷を思慕しながらも、生活のため肥沃な土地を求めてカナンを離れ、エジプトに移住。しかしエジプト王朝の支配が変転し、ユダヤ人は奴隷として虐げられることになる。

紀元前1230年頃、エジプトでの苦しい奴隷生活から逃れるべく、指導者モーゼに引き連れられた6千ものユダヤ人が、シナイ半島の砂漠を40年に渡りさまよう苦難の旅の末、ついに約束の地カナンへの帰還を果たす(出エジプト記)。この時、モーゼ一行に訪れる数々の奇跡や、モーゼがシナイ山上で十戒を受ける様子は、チャールトン・ヘストン主演のスペクタクル映画作品『十戒』で見事に描かれている。

ようやくカナンに定着したユダヤ人は、紀元前10世紀頃ダビデ、ソロモンの時代を通じて、イスラエル王国を築き、エルサレムを都として繁栄を謳歌するが、ソロモンの死後南北に分裂。アッシリアとバビロニアの侵攻により滅ぼされ、ユダヤ人は再びパレスチナの地を離れ、バビロンで捕虜生活を強いられる(バビロン捕囚)。

紀元前6世紀、長年の捕囚から解放されて父祖の地パレスチナに帰還するものの、ペルシア、ギリシア、ローマ帝国とこの地域の支配が歴史的に変遷する中、ユダヤ人国家は消滅。またしても亡国の民となったユダヤ人は、その後中世、近世、現代と世界各地に離散・移住したまま各地域に同化し、したたかに生き抜くが、メシアと呼ばれる救世主によってユダヤ人だけが救われるという強烈な選民思想を保持することもあって、反ユダヤ主義による迫害を受け続け、ナチスによるホロコースト大虐殺など苛烈な運命に翻弄されることになる。

しかし民族としてのアイデンティティーを失わなかったユダヤ人は、約束の地「カナン」に国家再建を目指す「シオニズム運動」を次第に強め、1900年代初頭より、アラブ人が居住するパレスチナの地へ入植を積極的に進めていくようになる。

イスラムとパレスチナ

一方、紀元570年頃のアラビア半島メッカの町でムハンマドが誕生。ムハンマドの生涯ムハンマドは普通の市民として、誠実な人柄で人々から敬愛されていたが、紀元610年40歳の頃に神アラーの啓示を受け、預言者(神の使徒)として神の恩恵の深さを人々に説くようになる。次第に若者を中心に信者集団が形成され、イスラム共同体を設立するが、激しい敵意を示す支配階級から迫害を受け、ムハンマドらは622年にヤスリブ(後のメディナ)へ逃れる(ヘジラ:聖遷)。

両勢力の激しい抗争が続くが、630年にメッカを陥落させたイスラム勢力は急激に勢力を伸ばし、教団国家としての安定的体制が確立。アラビア半島を占領したムハンマドは、支配地メディナのユダヤ教徒に対し、協力関係を築こうと寛容な態度で臨み、信仰の自由を保証するものの、ユダヤ教徒はムハンマドを偽預言者呼ばわりして協力を拒絶。ここにイスラムとユダヤの対決の萌芽を見てとることができるのかもしれない。

ムハンマドは632年に没するが、部族対立でバラバラだったアラブ人はイスラムによって結集し、一大勢力となってサラセン帝国(ウマイヤ朝―アッバス朝)として、東はインダス川、西はイベリア半島(スペイン)にまで及ぶ広大な領土を治め、パレスチナの地もイスラム勢力下に入る。エルサレム奪還を目指したキリスト教諸侯による十字軍によりイスラムが排除され、キリスト教国が一時的に建国されるものの、その後イスラム王朝オスマン帝国のもと、パレスチナは全面的にトルコ・イスラム勢力に支配されることになる。

イギリスの「三枚舌」とパレスチナ問題の発生

第一次世界大戦中のイギリス政府は、植民地インドとの連絡路を安定的に確保するため、中東地域を味方につける切り崩し政策を展開していた。「アラビアのロレンス」との異名で知られるトーマス・エドワード・ロレンスは、イギリス軍司令部の命により砂漠へ向かい、当時アラブを支配していたトルコ軍攪乱の戦略を練る。

ロレンスは、イギリス・オックスフォード大学で考古学を学び、1910年に大英博物館の中東遺跡発掘調査に参加したことを契機に、アラブとの関わりを深めるが、オスマン帝国の圧制に苦しんでいたアラブ人に深い同情を寄せていた。ロレンスは、類まれな勇敢さと巧みな知恵を発揮して部族対立の激しかったアラブ人を結集し、反乱を指揮。難攻不落の要衝アカバ攻略を果たし、アラブ人の士気と独立の機運を高める。

しかしロレンスのアラブ独立への理想や期待とは裏腹に、イギリス政府は帝国主義的思惑で、この地域の戦後処理に「三枚舌」外交を展開。すなわち、アラブ諸国の盟主に対しては、パレスチナ地域にアラブ独立国家建設を承認する「フセイン・マクマホン協定」を1915年に締結。ところが1916年には「サイクス・ピコ協定」によりパレスチナは英・仏・露の保護国とする旨を密約。さらに1917年にはパレスチナにユダヤ人の民族的郷土設立を支持する「バルフォア宣言」をもって、ユダヤ人支援を約束する。

このイギリスの行き当たりばったりの無責任な外交政策により、パレスチナは混乱を深め、収拾つかない事態に陥り、ついにイギリス政府は第二次大戦後、パレスチナ地域の統治問題を放棄、解決を国連に委ねる。

1947年、国連はパレスチナ分割を決議し、アラブ国家とイスラエル国家の建国を認めることとしたが、イスラエルに有利な決議案にアラブ諸国は納得せず、念願の国家建設を果たしたイスラエルとの間に武力衝突が勃発(中東戦争)。ここにパレスチナは現在に続く、長く深刻な紛争を抱えることになった。

立山良司氏の『イスラエルとパレスチナ 』によれば、イスラエル国家建設直後は、対立の渦に突入し始めながらも、まだイスラエル人とパレスチナ人がお互いを尊重し、思いやりながら交流する情景が見られたようである。果たして両民族が憎しみと悲しみの連鎖を脱し、平穏な生活を当たり前のように送れる日々が来るのか。それぞれのこの地との宿命の結びつきに思いを巡らせると、深く嘆息するばかりだ。

小説「聖書」旧約篇

小説「聖書」旧約篇 ■著者:ウォルター・ワンジェリン /仲村明子 ■出版社:徳間書店 ■サイズ:単行本/454p ■発行年月:1998年05月 ▼内容(「BOOK」データベースより) 天地創造の不思議、モーセの出エジプト、ダビデとソロモンの栄華、そしてバビロン捕囚まで―。旧約聖書の世界はかくも波瀾万丈の人間ドラマだった。映画を観るようにあざやかに、今よみがえる。 ▼アマゾンレビューおすすめ度の平均: 5.0/5 いまさら本/5 読むべき本/5 聖書を身近にさせてくれた著者に感謝

アラビアのロレンス

アラビアのロレンス 完全版 ■出演: ピーター・オトゥール 、オマー・シャリフ 、 アレック・ギネス 、 アンャjー・クイン 、 ホセ・ファーラー ■監督: デビッド・リーン ■形式: Color 、Widescreen 、Dolby ■言語 英語 、 日本語 ▼内容(「DVD NAVIGATOR」データベースより) ピーター・オトゥール主演による戦争スペクタクル史劇が、お買い得な2枚組シリーズ「E-SELECTION」に登場。トルコ軍の圧政から遊牧民を解放させるために現地ヘ派遣されたロレンスは、苦戦を強いられながらもアカバの町を急襲する。