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失敗学

「責任追及」から「原因究明」へ

先日、埼玉県ふじみ野市のプールで、遊泳中の女子児童が吸水口に吸い込まれ死亡するという痛ましい事故が発生した。事故後、市当局、管理会社の管理体制のずさんさが指摘され、世間、マスコミからの厳しい糾弾がしばらくの間続いた。

死亡事故のような致命的な事件はあってはならないことだが、およそ人間の営みにおいて失敗は日常茶飯事のように発生し、避けがたいものである。重要なのは「失敗は成功の母」となるべく、失敗を直視し、同様の事態を繰り返さないよう失敗を生かしていく態度といえる。

失敗や事故、災害等の原因を科学的に解明し、その分析結果をポジティブに活用して、新たな失敗を防止・予防するための学問が「失敗学」。

「失敗学」は工学院大学教授の畑村洋二郎教授が提唱したもので、畑村創造工学研究所同教授が主宰する「畑村創造工学研究所」では、六本木ヒルズで男子児童が回転ドアに挟まれて死亡した事故について企業、医師、法律家などと連携して解明・防止策を提案する「ドアプロジェクト」を進めるなど、「失敗学」を机上の学問にとどめずに実践・活用し、社会へその研究成果を積極的に還元している。

畑村教授が「失敗学」を生み出すきっかけとなったのは、同教授の大学での教育体験にあるそうだ。普段退屈そうに講義を聞く学生が、ある日教授が自身が犯した失敗談を話したところ、途端に興味を持ち身を乗り出してきた。そこで、「失敗事例」を入り口とした講義を積み重ねるようにし、その結果「失敗学」が生まれたとのことである。

失敗のメカニズム

NHK教育TV『知るを楽しむ この人この世界』の「だから失敗は起こる」(2006年8・9月放映中)では畑村教授がホストとなり、具体的に発生した事件や事故を題材として、身近に経験しがちな失敗にも敷衍できるエッセンスが興味深い形で紹介されている。例えば、

失敗の原因は10項目に分類できる

畑村教授が独自に集めた失敗事例を原因によって分類し、整理していくと、10のカテゴリーに分けられたという。そのうち9つは、無知・不注意・誤判断などによるもので、予測し、防げるもの。ただしひとつだけ「未知」という予測できない失敗のカテゴリーが存在する。「未知」の失敗に遭遇し、そこから学ぶことで人間は進歩する。

成熟した組織に生まれる「スキマ」

JR西日本福知山線の脱線事故について、マスコミは事故の要因として、JR西日本に固有の企業体質(事故当日、職員がゴルフコンペやボウリングに行っていたこと等)をクローズアップして糾弾したが、こうした危険性は多くの組織が抱えがちなものである。組織が成熟すると「だれかがやるはず」という「スキマ領域」が発生し、そこから失敗が生まれやすい。

失敗の残し方

失敗を残すことが大事である。その残し方は原因と結果のみ記した「客観的な情報」よりも、何がどう起こったか、時には心理状態にまで踏み込んだ「脈絡」が貴重である。それは悲惨さを伝えるためではなく、何がどう起こったかをだれもが感じられるようにするため。日航御巣鷹山の墜落事故で、墜落した日航機の残存部品などを展示した「安全啓発センター」は畑村教授のこの考えに基づき、設立されたものだそうだ。

教訓に富んだ「失敗知識データベース」

科学技術振興機構のウェブサイト「失敗知識データベース」では、国内外で発生した科学技術分野の重要事故や失敗の事例がデータベース化され、その分析記録を見ることができる。1つの事例に対して、「シナリオ」「事象」「原因」「対策」「後日談」「よもやま話」「当事者ヒアリング」等の項目に分けて記述されており、一般の組織において失敗分析をする際のお手本として参考にすることができそうだ。

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