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リーディング・トレーニング

スティーブン・キングの翻訳者は「奥手の原書読み」

アメリカの人気ホラー作家スティーブン・キングの『ダーク・タワーシリーズ』が新潮文庫より刊行されている。なにもかもが奇妙に歪んだ異境の地を舞台に、最後の“ガンスリンガー”、孤高の拳銃使いローランドが、“黒衣の男”を追い続け、ダーク・タワー1 ガンスリンガーひとりの少年とともに旅を続ける―というダーク・ファンタジー。7作をもって完結するという長大な小説で、キングがまだ大学生であった1970年ごろから構想をあたためていたと伝えられる。数々のベストセラーを量産する彼が、「これこそ自分のライフワーク」と言い切る渾身の作品だ。

このダーク・タワーシリーズの翻訳者が風間賢二氏。英米文学翻訳家として数多くの訳出を手がけると同時に、ファンタジー、ホラー、ポストモダン小説に精通し、『ホラー小説大全 』『ダンスする文学 』等、いささかマニアックながらも最先端の作品群を切れ味豊かに解説した評論書も上梓している。

スティーブン・キングに関しても、アメリカで発刊されるあまたの研究書・関連図書のオリジナルをすべて渉猟している様子で、相当な読書家、英語の達人と察せられるのだが、本人曰く、大学生になるまでまっとうに小説を読んだことがなく、また英語の原書に初めて接したのは社会人になってからだという。

原書速読のために

かつてアルクの『ENGLISH JOURNAL』誌上で自身述べているところでは、風間氏は大学を卒業後、ミステリーやSF小説等の出版で有名な早川書房に就職。newspaperそこで出版企画の検討を行う中で、新刊の原書をいやがおうでも読む必要(それも一週間に一冊のペースで)に迫られ、この時の体験からふたつのこと、すなわち「原書に慣れること」と「速読」が身についたという。

氏は原書に慣れるためのトレーニングとして、ある程度内容がわかっていて、話がおもしろくて短い英訳版のグリム童話とアンデルセン童話を読むことからスタートしたそうだ。こうしたものを5、6冊こなすことで、原書を読み通す自信がつき、さらに英文に対する勘と創造力が養われてくると薦めている。

この英文に対する勘と創造力が速読につながる。主語と動詞と時制さえわかれば、文章の骨格はつかめるもので、知らない単語があっても辞書を引かず、とりあえずストーリーさえわかればそれでいい。「いい加減でおおざっぱな人間のための読書法」かもしれないが、量をこなし、英文に対する勘と想像力を養うには役立つ。そしてこれらは、精読を必要とされる純文学やミステリーを読むための基礎でもある、と説いている。

辞書をなるべく引かずに、とにかくたくさんの英語を読む「多読」の効用は、しばしば強調されるところだが、「奥手の原書読み」から人気翻訳家に到った人のことばだけに格別の説得力がある。

ちなみに風間氏が、好奇心を刺激する初心者用テキストとして推薦しているのがディーン・クーンツの作品。物語がおもしろく、しかも分厚いから、読破した暁には自信がつくこと請け合いとしている。

スチーブン・キング